EAP(従業員支援プログラム)比較|高卒・若手社員の『人間関係の悩み』を早期にキャッチする社外相談窓口の選び方【中小企業向け】
2026.09.08

厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」によると、初めて勤務した会社を辞めた理由(3つまでの複数回答)は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」28.5%、「人間関係がよくなかった」26.4%、「賃金の条件がよくなかった」21.8%、「仕事が自分に合わない」21.7%の順となっています。さらに勤続期間別に見ると、1年未満で退職した人に限っては「人間関係がよくなかった」と回答した割合が最も高くなっています。給与や労働時間の見直しは経営判断が伴い簡単ではありませんが、人間関係の行き詰まりは、本人が誰にも話せないまま一人で抱え込み、気づいたときには手遅れになっているケースが少なくありません。
中小企業でも、上司や人事担当者への相談窓口はすでに用意している企業が多いはずです。しかし、入社間もない高卒・若手社員にとっては「身近な上司にこそ相談しにくい」という心理的なハードルも存在します。そこで、社外の専門家に匿名・無料で相談できるEAP(従業員支援プログラム)を、社内窓口に加えたもう一段の受け皿として検討する企業が増えています。本記事では、EAP・社外相談窓口サービスを客観的に比較し、自社に合う選び方を整理します。
人間関係の悩みは『入社1年未満』の離職理由で最も高い割合
厚生労働省の調査では、勤続1年未満で辞めた人の離職理由のうち「人間関係がよくなかった」の割合が最も高くなっています。若手社員が声を上げやすい相談先を用意しておくことが、早期離職対策の一つになります。
EAP(従業員支援プログラム)比較表
| サービス | 特徴 | 料金目安 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| アンリ(株式会社ドクタートラスト) | 産業医紹介で全国トップクラスの実績を持つドクタートラストが運営する外部相談窓口。保健師・精神保健福祉士・公認心理師などの医療系国家資格者が、ハラスメントとメンタル・フィジカルの相談を一元的に対応 | 月額11,000円(税込)〜。産業医契約との併用でさらに優遇あり(公式サイトで公開) | 初めて社外相談窓口を導入する企業、産業医契約とあわせてコストを抑えたい企業 |
| ピースマインド株式会社 | EAP専門会社として約1,400社に導入実績。公認心理師・臨床心理士による社員カウンセリングに加え、管理職向けのマネジメントコンサルテーションやハラスメント・危機対応まで対応。中小規模向けの「ピースマインドクラブ」も用意 | 要問い合わせ(セルフケア/マネジメントアシスト等プランにより変動) | 管理職への助言やハラスメント対応まで含めて専門的に相談したい企業 |
| 株式会社ジャパンEAPシステムズ(JES) | 1993年設立、国内で最も早くからEAPを専門に手がけてきた企業の一つ。契約企業ごとに専任カウンセラーを配置し、利用状況を定期的に企業へ報告。研修・職場復帰支援・緊急事態対応まで対応範囲が広い | 要問い合わせ | 復職支援や管理職研修まで含めて長期的に一社に伴走してほしい企業 |
| 株式会社パソナセーフティネット | 「なんでも相談窓口」を軸に、電話24時間365日・メール24時間受付・面談(平日)に対応。従業員本人だけでなく家族も利用可能で、公式サイトでは年間2,000社・150万人以上の利用実績を公開 | 要問い合わせ | 家族も含めた24時間対応の相談窓口を求める企業、ストレスチェックなど複数サービスをまとめて委託したい企業 |
| 株式会社保健同人フロンティア | 全国にカウンセラーを配置し、出張面談を含む対面カウンセリングに強みを持つ「現場型EAP」。復職支援や人事部からのリファー相談にも対応 | 要問い合わせ | 地方の拠点・工場等で対面相談を重視したい企業 |
※料金・サービス内容は変更される可能性があるため、導入検討時は必ず各社公式サイトで最新情報を確認してください。
そもそもEAP(従業員支援プログラム)とは
EAP(Employee Assistance Program)とは、従業員が抱えるストレスやメンタルヘルスの課題、職場の人間関係の悩みなどを早期に発見し、専門家によるカウンセリングや助言を通じてサポートする仕組みです。社内に専門部署を置く「内部EAP」と、外部の専門会社に委託する「外部EAP」があり、中小企業では外部EAPを利用するのが一般的です。企業がEAPベンダーと契約し、従業員が無料・匿名で利用できる形態が多く採用されています。
ハラスメント相談窓口との関係
2022年4月からは、改正労働施策総合推進法により、パワーハラスメント防止のための相談窓口整備が中小事業主にも義務化されています。厚生労働省の指針では、相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知することなどが事業主に求められています。EAPサービスの多くはハラスメント相談も一元的に受け付けられる設計になっているため、義務化された相談窓口の実効性を高める手段として、あわせて検討する企業が増えています。
なぜ今、中小企業でもEAP導入が検討されているのか
これまでEAPは大企業を中心に導入されてきた印象がありますが、前述の通り高卒・若手社員の離職理由で「人間関係」が上位を占める状況を踏まえると、従業員数の少ない中小企業ほど、一人ひとりの不調や悩みに早く気づく仕組みが定着に直結しやすいといえます。特に、産業医や人事の専門職を自社で抱えることが難しい中小企業にとって、必要なときだけ専門家に相談できる外部EAPは、コストを抑えながら体制を整える現実的な選択肢の一つです。
EAPは『不調者対応』だけでなく『予防』の窓口でもある
EAPというと休職者向けの復職支援を思い浮かべがちですが、多くのサービスは不調の芽が小さいうちに相談できる予防的な窓口としても機能します。深刻化する前の段階で使ってもらえるかどうかが効果を左右します。
各社の特徴
アンリ(株式会社ドクタートラスト)
産業医紹介事業で全国トップクラスの実績を持つドクタートラストが運営する外部相談窓口サービスです。保健師・精神保健福祉士・公認心理師といった医療系国家資格を持つ専門職が窓口対応にあたり、ハラスメントだけでなくメンタル・フィジカルの相談まで一元的にカバーできる点が特徴です。相談方法は電話・オンライン面談・メール(24時間)・対面と幅広く、契約期間の縛りがない点も、初めて社外窓口を導入する企業にとって検討しやすいポイントです。料金は月額11,000円(税込)〜と公式サイトで公開されており、産業医契約との併用でさらに優遇される案内もあります。
ピースマインド株式会社
EAP専門会社として約1,400社への導入実績を持ち、公認心理師・臨床心理士などの資格者による社員カウンセリングに加えて、管理職・人事担当者向けのマネジメントコンサルテーション、問題行動対応、事故や自死などのクライシスケアまで幅広く対応しています。中小規模の企業・団体向けに、EAPパッケージから必要なサービスを厳選した「ピースマインドクラブ」も提供しており、公式サイトでは日英24時間対応や産業医科大学によるCOA認定取得も紹介されています。料金は契約プランにより変動するため、公式サイトから見積もりを確認する形になります。
株式会社ジャパンEAPシステムズ(JES)
1993年に設立された、国内で最も早い時期からEAPを専門に手がけてきた企業の一つです。契約企業ごとに専任カウンセラーを配置し、相談室の利用状況を定期的に企業へ報告する体制を整えているほか、新入社員向け・管理職向けの研修、職場復帰支援、事件・災害後の緊急事態ストレスマネジメントまで対応範囲が広いのが特徴です。設立以来10万件以上の相談実績があり、カウンセラーは医療経験を踏まえた有資格の常勤社員のみで構成されています。料金体系は公式サイトに公開されておらず、問い合わせが必要です。
株式会社パソナセーフティネット
「なんでも相談窓口」を中心に、電話相談は24時間365日、メール相談は24時間受付、面談・オンラインカウンセリングは全国約66拠点で平日対応しています。従業員本人だけでなく家族も利用できる点が特徴で、公式サイトでは年間2,000社・150万人以上に選ばれているという利用実績が公開されています。ストレスチェックやハラスメント相談窓口、産業医紹介などのサービスもあわせて提供しており、複数の施策をまとめて外部委託したい企業に向いています。料金は公式サイトに公開されておらず、問い合わせが必要です。
株式会社保健同人フロンティア
全国にカウンセラーを配置し、出張面談を含む対面カウンセリングに力を入れている「現場型EAP」です。対面(出張・カウンセリングルーム・WEB)・電話・メールでの相談に加え、休職中から復職後までの復職支援、人事部からの紹介による従業員カウンセリングにも対応しています。地方に拠点や工場を持つ企業、産業保健スタッフの人手が限られる企業から選ばれているサービスです。料金は公式サイトに公開されておらず、見積もりの問い合わせが必要です。
タイプ別おすすめ(向いている企業)
初めて社外相談窓口を導入する企業なら
契約期間の縛りがなく、料金も公式サイトで公開されているアンリのようなサービスは、社内稟議での説明もしやすく、初めての導入に踏み出しやすい選択肢です。
管理職への助言やハラスメント対応まで含めて相談したい企業なら
社員本人へのカウンセリングだけでなく、部下への対応に悩む管理職側の相談窓口も重視するなら、マネジメントコンサルテーションを備えたピースマインドのようなサービスが候補になります。
拠点が全国・地方に分散している企業なら
対面での相談を重視するなら、全国にカウンセラーを配置し出張面談に対応する保健同人フロンティアのようなサービス、電話・オンラインを中心に幅広くカバーしたいならパソナセーフティネットのようなサービスが選択肢になります。
復職支援や研修まで含めて長期的に伴走してほしい企業なら
不調者が出たときの一時的な相談窓口だけでなく、復職支援や管理職研修まで一貫して依頼したい場合は、ジャパンEAPシステムズのように対応範囲の広いサービスとの相性を確認する価値があります。
よくある質問
中小企業はEAPの導入が義務ですか?
EAPサービス自体の導入は義務ではありません。ただし、2022年4月からはパワーハラスメント防止のための相談窓口整備が中小事業主にも義務化されており、EAPサービスの多くはこの相談窓口としての機能もあわせ持っています。義務対応と若手の定着支援を同時に進める手段として検討する企業が増えています。
料金はどのくらいかかりますか?
本記事執筆時点で確認できた範囲では、アンリ(ドクタートラスト)が月額11,000円(税込)〜という料金を公式サイトで公開しています。その他のサービスは従業員数や契約プランによって変動するため、各社に見積もりを依頼して確認することをおすすめします。
高卒・若手社員は実際に社外の相談窓口を使ってくれるものですか?
匿名性が保たれ、会社に内容が伝わらないことが明確であれば、身近な上司より話しやすいと感じる若手社員は少なくありません。ただし、窓口を用意するだけでは使われないケースもあるため、入社時の説明や社内掲示などで「いつでも使える相談先がある」ことを繰り返し伝える工夫が必要です。
EAPを導入すれば早期離職はなくなりますか?
EAPはあくまで人間関係やメンタルの悩みに早く気づき、深刻化する前に対応するための手段の一つです。離職理由には賃金や労働時間の条件も上位に挙がっているため、給与・休日の見直しやエンゲージメントサーベイなど他の施策とあわせて検討することで、より効果を発揮しやすくなります。
まとめ
厚生労働省の調査では、初めて勤務した会社を辞めた理由として「人間関係がよくなかった」が上位に挙がり、特に勤続1年未満ではこの理由が最も高い割合を占めています。中小企業でも、社内の上司や人事担当者への相談窓口に加えて、匿名で相談できる社外のEAPを用意しておくことが、若手社員の小さな不調のサインを早期にキャッチする手段になります。
アンリのように料金が明確で導入しやすいサービス、ピースマインドのように管理職支援やハラスメント対応まで幅広くカバーするサービス、ジャパンEAPシステムズのように復職支援や研修まで含めて長期的に伴走できるサービス、パソナセーフティネットや保健同人フロンティアのように対応時間や対面拠点に強みを持つサービスなど、それぞれ特徴が異なります。優劣で選ぶのではなく、自社の従業員規模や既存の相談体制との相性で選ぶことが大切です。
2022年4月からはパワーハラスメント防止のための相談窓口整備が中小企業にも義務化されており、EAPの導入はこうした法対応と若手の定着支援を同時に進める機会にもなります。「自社にどんな相談窓口が合うか分からない」という方は、若手採用ラボの無料相談・資料ダウンロードもあわせてご活用ください。
出典
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/4-21c-jyakunenkoyou-r05_gaikyou.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf
- https://doctor-trust.co.jp/hokenshi/anri/
- https://www.peacemind.co.jp/service/eap
- https://www.jes.ne.jp/service/
- https://www.safetynet.co.jp/service/employee/soudan/
- https://service.hope-survey.jp/service-list/eap
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