奨学金代理返還制度、導入企業は4,852社に|若手採用・定着の差別化策として中小企業が知っておきたいこと
2026.08.13

給与や休日日数といった条件面ではどうしても大手企業に見劣りしてしまう——高卒・若手採用に取り組む中小企業の担当者から、そうした悩みを聞くことは少なくありません。求人票の書き方や面接の工夫は重ねてきたものの、「条件面で選ばれる」ための新しい打ち手を探している段階の担当者も多いはずです。
そうした選択肢の一つとして、ここ数年で急速に導入企業を増やしているのが「奨学金返還支援(代理返還)制度」です。企業が社員に代わって日本学生支援機構(JASSO)へ奨学金を返還する仕組みで、令和8年3月末時点で全国4,852社が導入しています。本記事では、公式データをもとに制度の仕組みと広がりを整理し、中小企業の採用・定着施策としてどう活かせるかを考えます。
『高卒プロパー』より『若手・第二新卒』採用と定着に効く制度
奨学金代理返還制度の対象は、大学・短大・専門学校などでJASSOの奨学金を借りていた人です。高校卒業後すぐに就職した社員は対象になりませんが、第二新卒や専門卒・大卒の若手採用、また社員が進学した場合の定着施策としては有効な選択肢になります。
奨学金代理返還制度とは何か
奨学金代理返還制度は2021年4月に始まった制度で、企業がJASSOの奨学金を借りていた社員に代わり、返還額の一部または全額を社員を介さず直接JASSOへ送金できる仕組みです。中小企業庁の紹介ページでは、社員にとっては返還の負担が軽くなり、企業にとっては人材の定着につながる「Win-Winの関係」を築ける制度として紹介されています。
企業側の会計処理としては、返還支援に充てた費用を給与としての損金に算入できる点も特徴です。制度を利用するには、企業がJASSOに申し出て「代理返還申出書」を提出し、対象となる社員ごとに手続きを行う必要があります。
導入企業は4,852社、2023年から急拡大
JASSOの公式ページによると、代理返還制度の導入企業数は令和8年3月末時点で全国4,852社です。日本経済新聞の報道では、2023年1月時点での導入企業は「1,000社超」だったと伝えられており、そこからおよそ3年で導入企業数が4倍以上に増えたことになります。
制度の広がりはここ数年の急激な変化
1,000社を超えたのが2023年1月、4,852社に達したのが2026年3月末。導入企業数の推移からは、この2〜3年で急速に一般化しつつある制度であることが分かります。
文部科学省は2026年7月28日、経団連・日本商工会議所に対して制度の普及を要請するとともに、2027年度末までに導入企業を1万社に倍増させる目標を公表しました。国として後押しを強めている段階にあるため、今後も導入企業数はさらに増えていく可能性があります。
誰が対象になるのか——高卒新卒者は対象外という点に注意
この制度でまず押さえておきたいのは、対象がJASSOの奨学金(第一種・第二種)を借りていた人に限られるという点です。JASSOの奨学金は大学・短期大学・高等専門学校(4年次以上)・専修学校専門課程の学生が対象であり、高校卒業後すぐに就職する生徒は基本的に対象になりません。
そのため、高卒プロパー採用そのものへの直接的な訴求材料にはなりにくい制度です。一方で、次のようなケースでは十分に活用できます。
- 第二新卒・既卒(専門卒・大卒)の若手採用:奨学金の返還負担を抱えたまま転職を検討している若手に対して、条件面での差別化になります
- 高卒入社後に進学・資格取得を支援している企業:社員が専門学校等に進学し奨学金を借りた場合、その後の定着施策として利用できます
- 高卒採用と並行して若手中途・第二新卒採用も行っている企業:採用ページや求人票で「奨学金返還支援あり」を打ち出す一つの材料になります
採用・定着施策としてどう活かすか
制度を導入している企業の中には、返還支援を単なる福利厚生としてではなく、採用活動でのアピール材料として明確に位置づけているケースがあります。中小企業庁の紹介ページでも、社員の定着とあわせて採用面でのメリットが挙げられています。
活用にあたっては、次のような点を意識すると効果的です。
- 「返還支援あり」で終わらせず、支給額・期間・条件を具体的に示す:抽象的な表現よりも、月額や年間の支援上限額、支援を受けられる期間を明記したほうが、求職者にとって判断材料になります
- JASSOのWebサイトへの企業名掲載を活用する:制度を導入するとJASSOのサイトに企業名や支援内容が掲載され、奨学金返還を意識している求職者からの認知経路になります
- 既卒・第二新卒層への求人票・採用ページで訴求する:高卒新卒の求人票ではなく、第二新卒・中途採用向けの求人票や採用ページで打ち出すのが対象読者に合った使い方です
『制度があること』より『どう伝えるか』で差がつく
代理返還制度そのものは全国で広がりつつあり、導入している事実だけでは差別化になりにくくなっています。支給額や条件を具体的に開示し、社員の声とあわせて伝えることが、他社との違いを生む部分です。
まとめ
奨学金代理返還制度は2021年4月に始まり、令和8年3月末時点で導入企業は全国4,852社に達しています。2023年1月時点の1,000社超から数年で大きく拡大しており、文部科学省も2027年度末までに1万社への倍増を目標に普及を後押ししています。
ただしこの制度は、JASSOの奨学金を借りていた人が対象であり、高校卒業後すぐに就職した社員は対象になりません。高卒採用そのものへの直接的な訴求材料というよりも、第二新卒・専門卒・大卒の若手採用や、社員の進学後の定着施策として検討する制度だと捉えるのが実態に近いでしょう。
高卒採用と合わせて第二新卒・若手中途の採用も行っている企業にとっては、条件面での新しい差別化策になり得ます。自社にとって導入する価値があるか、他にどのような若手採用・定着の選択肢があるか判断に迷う場合は、無料相談や資料ダウンロードもご活用ください。
出典
採用の悩みを相談する
無料相談を予約する

